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Kのおすすめ


 2004年5月10日 第18回

コナン・ドイル、林克己(訳)『シャーロック・ホウムズ バスカーヴィル家の犬』(岩波少年文庫) 請求記号【930:JD】

 江戸川コナン(マンガ『名探偵コナン』)、金田一耕助(横溝正史『犬神家の一族』、『八つ墓村』)、エルキュール・ポアロ(アガサ・クリスティ『オリエント急行殺人事件』)など、どんな時代でも、どんな場所でも探偵は人気があります。その探偵が主人公となっている「推理小説」の原点と言えば、やはり「シャーロック・ホウムズ」シリーズではないでしょうか。今回取り上げるのは、その中でも名作名高い『バスカーヴィル家の犬』です。
 私がこの作品に出会ったのは、確か小学校6年生のとき。当時NHKで放映されていた「シャーロック・ホームズの冒険」というTVドラマでした。このドラマは、イギリスのTV局が制作したもので、原作を忠実に再現したのはもちろんのこと、ホウムズが生きたとされる時代や場所の雰囲気まで忠実に再現されていた、今でも名作の誉れ高いドラマです(このドラマのビデオ全22巻は図書館にあります。ぜひ、借りて見てください!)。そのドラマがきっかけとなって、原作を読むようになったことを記憶しています。
 「ネタバレ」になってしまいますので、詳細は言えませんが、内容は次の通りです。バスカーヴィル家には「魔犬」に祟られているという言い伝えがありました。あるとき、バスカーヴィル家の一族が「魔犬」に襲われて謎の死を遂げます。その事件を解決するため、多忙のホウムズに変わって、相棒のワトソンがバスカーヴィル家に入ります。そのころ、ホウムズは事件解決にむけて別行動をとっていたのですが・・・。

 2004年1月8日 第17回

山岡荘八『伊達政宗』1〜8(講談社文庫)

遠藤周作『王の挽歌』(平凡社)

吉川英治『黒田如水』(講談社文庫)

 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
 さて、この年末年始、みなさんはいかがお過ごしでしたか。自宅で、帰省先で、旅行先でテレビを見ていた、って人も多いのではないでしょうか。
 年末年始番組と言えば、やはり「時代劇」。今回は年末年始に放映された「時代劇」から、いくつか本を紹介したいと思います。
 1月3日、4日、NHKで再放送されていたのは、「独眼竜政宗」です。私がちょうど小学生のとき、放映していたドラマです。39.7%というとんでもない平均視聴率を叩き出し、当時一大ブームを巻き起こしました。主人公は奥羽(東北地方)の戦国大名伊達政宗。それを、映画「ラストサムライ」でもお馴染みの渡辺謙さんが演じていました。白装束での豊臣秀吉との面会、針の穴が空いた花押、イスパニア(スペイン)に懸けた野望などなど、名シーンは数えればきりがありません。もちろん、それらは原作山岡荘八『伊達政宗』でも描かれています。
 4日の夜には、「大友宗麟〜心の王国を求めて」がNHKで放映されていました。原作は遠藤周作『王の挽歌』です。遠藤周作の他の作品同様、悲壮感漂うエンディングでした。主人公はキリシタン大名として有名な戦国大名の大友宗麟。それを「暴れん坊将軍」でお馴染みの松平健さんが演じていました。
 キリシタン大名といえば、黒田如水もそう。書棚を家捜ししていたら吉川英治『黒田如水』が出てきました。あまりにも才能がありすぎたため、秀吉や家康に恐れられて天下が取れなかった如水(官兵衛)ですが、結果として江戸時代には福岡藩52万石を有するまでになりました。われらが兵庫県とちょこっと関係があるのもいいですね。ちなみに司馬遼太郎『播磨灘物語』も如水を扱った物語です。
 信長、秀吉、家康もいいけど、他の魅力ある戦国大名にも触れてみてくださいね。

 2003年11月7日 第16回

茂山千之丞『狂言じゃ、狂言じゃ!』(晶文社)

野村萬斎『萬斎でござる』(朝日文庫)

野村萬斎『狂言サイボーグ』(日本経済新聞社)

 来たる11月13日(木)、芸術鑑賞会として狂言を観ることになっています。今回はそれにあわせて、狂言に関するおすすめ作品をいくつか紹介したいと思います。
 まず、今回わざわざ関学まで足を運んでいただける茂山千之丞先生の作品『狂言じゃ、狂言じゃ!』。個人的には第二部「狂言百面相」が一番楽しめました。狂言の登場人物を太郎冠者、大名・小名などと分類しつつ、具体的に狂言の例を挙げて解説しています。あと第三部「狂言船中八策」もいいですね。狂言の今、未来を知る上で、とても大切な見方だと感じました。
 次に、映画「陰陽師」ですっかりおなじみになった野村萬斎さん。私は「陰陽師」よりもNHK大河ドラマ「太平記」の細川勝元役やNHK朝の連続テレビ小説「あぐり」のエイスケ役の方が印象に残っていますが。
 まずは、『萬斎でござる』。生い立ちとそこから生み出された狂言観、そして最後に初心者向けの狂言案内が記されています。狂言って聞くと、みなさんは堅苦しく感じるかもしれませんが、案外知られている話が多いんですよ。たとえば「附子」は、誰もが知っているはず。
 『狂言サイボーグ』はどちらかというと、野村萬斎ファン向けの本。本人の写真もたくさん入っています。最後の「狂言サイボーグ」って詩が個人的には気に入りました。
 市川新之助、中村獅童、野村萬斎・・・。伝統芸能に携わっている人って、一見奇抜でも、確固たるポリシーが垣間(かいま)見られて、「かっこいい!」と唸ってしまう何かを持っているような気がします。伝統芸能と今、みなさんはどう捉えますか?


 2003年9月9日 第15回

北杜夫『楡家の人びと』上・下(新潮文庫)

 「どくとるマンボウ」シリーズや前に紹介した『船乗りクプクプの冒険』でおなじみの北杜夫さんですが、こんな作品があるのをみなさんはご存知ですか?
 『楡家の人びと』は、トーマス・マンの『ブッデンブローク家の人びと』の影響を受けたと言われています。トーマス・マンは、ノーベル文学賞を受賞したドイツの作家。『トニオ・クレエゲル』、『魔の山』、『ヴェニスに死す』などが世界的にもとても有名です。北さんの他の作品にもこれらの影響が見られます。比較してみるのも、おもしろいかもしれません。
 北さんのお父さんは、歌人の斉藤茂吉さんです。斉藤さんは歌人でありながら、東京で精神病院を経営していました。そのため、北さん自身も医業に詳しく、「どくとる(=ドクター)マンボウ」と称していることからも、それがよくわかります。
 斉藤さんは「楡徹吉」として、北さんは「楡周二」として、この物語に登場します。そう、この物語は、斉藤家(北家)をモデルとした物語なのです。

  • 楡基一郎:楡脳病院の創設者。調子がよく、派手好きだが、医者としての腕は大したもの。
  • 楡龍子:基一郎の長女。「日本一頭のよい男」(徹吉)と結婚し、基一郎の養子に迎える。
  • 楡徹吉:基一郎の養子。郷里では「神童」と呼ばれる。まじめ・努力家で養父とは正反対。
  • 楡周二:夢想好きのだらしのない徹吉の末っ子。軍国少年。

 楡家を窓口として、明治後期から昭和前期における日本社会の歴史を見ることができます。大作ですが、そのストーリーにのめり込むこと間違いなし!おすすめです!


 2003年5月19日 第14回

清水義範、西原理恵子(絵)『おもしろくても理科』(講談社文庫)

清水義範、西原理恵子(絵)『もっとおもしろくても理科』(講談社文庫)

 清水義範さんと言えば、恐ろしいスピードで新作が出ることで有名です。清水さんの書くスピードに、ファンでも追いつけないほど。それも、どの作品も味があって、おもしろい。いやはや、そのバイタリティの高さには、ただただ驚かされます。
 その清水さんとタッグを組んだのが、麻雀をネタにしたシュールな漫画を描く西原さんです。清水さんが西原さんの大ファンということから、この組み合わせが実現したそうです。
 で、この本は他に国語、社会などがある「お勉強シリーズ」の1つです。「○○科」って書いてあると、どこか堅苦しいイメージがします。でも、この「お勉強シリーズ」はそんなこと、まったくありません。

 「人口の爆発はこわい」
 (「地球にやさしく」って言っている人に対して・・・)今、世界の人口は約55億人だが、これが100億を越すと大爆発して地球が木っ端微塵になるという、そういう物理的な爆発を考えるアホはおるまい。もちろん人口の急激な大増加によって人間の住環境が脅かされるという話だ。
 そうなのだよ、人口だ。これを忘れて地球(そこで生きる人類)のことを考えるなんて、病気を見て患者を見ないくらい愚かなことであった。

 絵もシュールなら、文もシュール。楽しく読めますが、大事な問題がはらんでいます。そこんところを見逃すなかれ。


 2003年3月10日 第13回

北杜夫『船乗りクプクプの冒険』(新潮文庫)

 とにかくおもしろくて読みやすい。中学1年生でも1時間もあれば読み終えることができるでしょう。ゆえに、本来は小学生で紹介すべき作品かもしれません。
 読んでいる本の世界に引きずり込まれる。本が好きな人なら一度は経験したこと、ありますよね。もちろん、実際にそんなことが起こるはずもなく、自分の心の中で起こっていることです。でも、この物語ではそんなことが実際に起こってしまいます。
 この物語の中の本である『船乗りクプクプの冒険』はたった4ページしか書かれていません。この本の著者のキタ・モリオ(ちなみにこの物語の著者は北杜夫)が、厳しい編集者から逃げているからです。本の話は途中で終わり、残りの240ページ分は白紙になっています。
 主人公のタローは、キタ・モリオを見つけ出し、残りの240ページを書かせて、物語を終わらせないと、この本の世界から抜け出せません。そこで、タローはキタ・モリオを探し出そうとしますが、そうしている間にも、キタ・モリオが思いつきで話を書くので、いろいろなハチャメチャなことが起こってしまいます。
 でも、この物語、単におもしろくて、読みやすいだけではありません。著者が読者に訴える何か強いメッセージのようなものが含まれていると私は思います。それは何かを考えながら読むのが中学生流の読み方です。

 北杜夫さんは芥川賞を受賞した『夜と霧と隅で』、『幽霊』など、自身が学んだ医学が大きなモチーフとなっている小説から、「どくとるマンボウ」シリーズなどのユーモアあふれるエッセイまで、日本文学史上にその名をとどめる作品を多く書いています。これらの作品も一度読んでみてください。


 2003年2月7日 第12回

宮沢章夫『牛への道』(新潮文庫)

宮沢章夫『わからなくなってきました』(新潮文庫)

宮沢章夫『よくわからないねじ』(新潮文庫)

 清少納言「枕草子」、吉田兼好「徒然草」、モンテーニュ「随想録」、パスカル「パンセ」。エッセイ(随筆)というと、こんな高級な作品群を連想してしまい、なんだか堅苦しいなぁと考えている人が多いようです
 そもそも、エッセイというのは、自分で見たこと、聴いたこと、感じたことを、自分なりに深くほりさげて、できるだけ簡単に表現したものです。小説よりも、感性が直に表れるものだと、私は思います。
 そこで宮沢章夫さんです。全く堅苦しくありません。感性の豊かさ(?)に圧倒されるでしょう。兎にも角にも、おもしろい。大笑い(ガハハ)はしないかもしれませんが、小笑い(クスクス)は止まらないでしょう。
 たとえばこんな感じ。

 私は「がまん大会」を漫画でしか見たことがない。
 家の近所で、「がまん大会」があれば、一度くらい話の種に出場してみたいと子供の頃から、つねづね思っていたが、これまで「がまん大会」を開催する情報にふれたことがまったくないのだ。まあ、参加することにそれほどこだわりはなく、なんなら、見るだけでもいい。いったい、どこに行けば、「がまん大会」が開かれているのか。
 また、これまで一度だって、「俺はがまん大会のチャンピオンだ」と話す人にも会ったことがないのも不思議だ。「私は珠算の初段よ」とか、「高校ん時は、陸上部でね、三段跳び、県大会まで行ったよ」と言う人には会ったことがあるのに、「がまん大会出場者」にはまだ会ったことがないのだった。
 いったい、どこにいるんだ。がまん大会チャンピオン。

 今風の言葉で言えば「シュール」。
 でも、単なる笑いだけじゃなくて、物事をよく観察すること、断定的に一面をとらえてはいけないことを教えてくれます。


 2002年12月13日 第11回

山田詠美『ぼくは勉強ができない』(新潮文庫)

 「勉強ができる」ことはもちろんいいこと。でも、「勉強ができない」ことは悪いこと?いやいや、必ずしもそうじゃありません。この本を読み終えるとそう思えるに違いありません。
 主人公は時田秀美。「美」とあるけど男の子。サッカーが大好きな高校生です。「勉強はできない」けど、女の子にもてる。そんな秀美くんをお母さんとおじいさんはわかってくれるけど、どうも周りはわかってくれない。そんな話がいくつか入った短編集です。
 この秀美くんが通っている学校、中学部や高等部とは全然雰囲気の違う進学校みたいですね。でも、おそらく進学校とはこんな雰囲気なんでしょうね。「勉強ができる・できない」が生徒をはかるものさしの唯一の単位で、「女の子にもてる」なんてどうでもいいと。
 人間誰しもなんらかの特長、個性を持っているはず。本をたくさん読んでいる。スポーツができる。女の子にもてる。楽器が得意。ダンスが上手。ゲームがうまい。物知り。歌がうまい。絵が上手。笑わせることが得意。もちろん、「勉強ができる」も。そんなところを見つけていきたいですね。そうしたらみんな愛し合えるから。
 1年生でも、おそらく1時間もあれば読み終えることができます。みなさんはどう感じるかな?


 2002年11月7日 第10回

宮部みゆき『本所深川ふしぎ草紙』(新潮文庫)

藤沢周平『たそがれ清兵衛』(文春文庫)

乙川優三郎『生きる』(文芸春秋)

 『模倣犯』の大ヒットでミステリー作家としての位置を不動にした宮部みゆきさん。直木賞受賞作『理由』、山本周五郎賞受賞作『火車』、日本SF大賞受賞作『蒲生邸事件』、日本推理作家協会賞長篇部門受賞作『龍は眠る』、日本推理サスペンス大賞受賞作『魔術はささやく』など、「旬」を感じさせるミステリー小説で、私を楽しませてくれます。
 一方、以外に知られていないのが彼女の時代小説。とくに短編時代小説は、時代小説っぽくない小気味の良さが痛快です。この『本所深川ふしぎ草紙』もその一つです。人間のあたたかみが伝わる「ふしぎ」(←ひらがなが適当!)な小話です。
 ついでに、おすすめ短編時代小説を2つあげておきたいと思います。
 1つ目、藤沢周平『たそがれ清兵衛』。近々、映画化されるようなので是非ともおさえておきたい作品です。この作品に含まれている短編の題名はすべて「あだ名+名前」になっています。なぜそんなあだ名がついているのか。この作品の人間的魅力のエッセンスはそこにあります。
 2つ目、乙川優三郎『生きる』。前回の直木賞受賞作です。死ぬことの美学を描いた作品は数あれど、生きることのつらさ、そしてそれを乗り越えたすばらしさを描いた作品はあまりないと思います。先の藤沢周平の再来と言われている乙川優三郎さん、これからの作品にも期待したいと思います。

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