関西学院中学部図書館

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2007年度関西学院中学部通信「図書館より」


 2008年3月19日発行


 『カラマーゾフの兄弟』を読み切った生徒。『推薦図書リスト』の「読書ノート」の欄がいっぱいになって、それが3冊にも及んでいた生徒。30,000字を超えるレポートを書き上げた生徒。山岡荘八『徳川家康』二六巻を読破した生徒。先生相手に臆することなく論争を繰り広げた生徒。片っ端から「日本古典文学全集」を読んでいった生徒。新書を読んだ冊数で私と争っていた生徒。『推薦図書リスト』に掲載されている本をほとんど読み終えた生徒。まるで通販の実演者のようなプレゼンの技術を体得した生徒。「ライラの冒険」シリーズや『鹿男あをによし』など、映画化、ドラマ化された小説は必ず読んでいた生徒。「ラノベ」について語らせば右に出る者はいない生徒。

 そんな三年生が卒業しました。表層の目に見える部分だけでなく、先に挙げたような内面の目に見えない部分のレベルアップについても、常に貪欲だったことが強く印象に残っています。今の中学部に流れる豊かな文化は、三年生が牽引してつくりあげたと言っても過言ではありません。それを受け継ぐは二年生と一年生。読書はその大きな力となるはずです。

 春休み中、残念ながら中学部図書館は蔵書点検などのため閉館しています。その分、長期貸し出しによって、生徒たちはたくさんの本を借りて帰っていることだと思います。ご家庭におきましても、豊かな文化をつくりあげる生徒たちの読書生活を応援していただければ幸いに存じます。


 2007年12月20日発行


 あと約10日で終わる2007年は、「団塊世代」(1947-1949生まれ)が定年退職を迎える年。そのことによる影響を「2007年問題」と呼んで警戒していたところ、年金問題が浮上。知識や技能、そして人間総体の継承において、これからも「団塊世代」をめぐる様々な問題が出てくるものと思われます。

 その「団塊世代」の子の世代が「団塊ジュニア世代」(1971-1974生まれ)です。『下流社会 新たな階層集団の出現』(光文社新書)がベストセラーになった三浦展による「真性団塊ジュニア」(1972-1981生まれ)では私もその世代の一人となります。最近、この世代の作家が元気で、私も愛読しています。

 有川浩。「図書館戦争」シリーズ全4冊が話題になりました。「ラノベ」出身の作家だけにキャラクターが立っていて、スピード感もあります。「図書館の自由」というテーマの重みを微塵も感じさせません。テレビアニメ化決定。

 伊坂幸太郎。『死神の精度』は6つ短編。全て死神の視点で語られます。こちらも「死」という重いテーマながら、ストーリー展開や構成からエンターテイメント性をしっかりと保持。『重力ピエロ』に登場するキャラも登場します。春に映画化の予定。

 瀬尾まいこ。日常の生活にある温かい心持ちを、作中からじわじわと読者に伝えてくれます。『幸福の食卓』が映画化され有名になりました。『図書館の神様』は私の価値観にフィットした大切な作品。

 他にも、恒川光太郎、三浦しをん、森見登美彦など、とにかく元気です。
 
 生徒たちの世代は「ゆとり世代」(1987-生まれ)と言われています。ご存じの通り、「ゆとり」は学力低下を連想させるなど、あまりいい意味では使われていません。「ゆとり」がいい意味で使われるには、学力は言わずもがな、その狙いたる人間総体として向上しなければなりません。本はその一助となることでしょう。
 
 冬休み中、残念ながら中学部図書館は閉館しています。その分、生徒たちは長期貸し出しによってたくさんの本を借りて帰っていることでしょう。ご家庭におきましても、生徒たちの読書の後押しをいただければと思います。三学期、人間総体として向上した生徒たちの姿に出会えることを楽しみにしています。


 2007年7月20日発行


 「新潮文庫の100冊」、「ナツイチ」(集英社文庫)、「発見。夏の百冊 角川文庫」。毎夏、各出版社は「旬」のブックリストを作成して大規模なキャンペーンを繰り広げます。ブックリストの作成という点においては、中学部の『推薦図書リスト』と同じ。その動向に注目しています。

 今年の「新潮文庫の100冊」にはじめて、瀬尾まいこさんの作品(『卵の緒』)がラインナップされました。春に『幸福な食卓』が映画化されるなど、これからが期待されている作家です。瀬尾さんは現役の中学校教諭でもあります。生徒と先生の心温まる学校生活を描いた『図書館の神様』は、学校の先生ならではのリアリティに富んでいます。
瀬尾さんの作品には、よく中高生が登場します。特別な能力や技術は持っていない。ちょっとひねている。でも聡明で優しい。今どきの普通の中高生です。同世代の中学部生にとって、共感できる中高生ではないでしょうか。

 他者に共感する部分を見つける。さらには、そこを出発点として、共感できない部分をも違いとして包み込む。作中の同世代の人間に出会うことによって、人間の幅が広がります。この夏休み、そんな同世代の人間にたくさん出会ってくれることを願っています。

 夏休みも何日か図書館を開館しています。クラブのついででも構いませんので、図書館の利用をお勧めいただければと思います。

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