関西学院中学部図書館

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2003年度関西学院中学部通信「図書館より」

2004年3月19日発行

 藤沢周平がちょっとしたブームのようです。「たそがれ清兵衛」がアカデミー賞候補になったことも記憶に新しいところです。テレビでは「腕におぼえあり」(原作は『用心棒日月抄』)が再放送されたりしています。

 藤沢作品の中で、私が生徒によく薦めるのが『蝉しぐれ』(文春文庫)です。主人公の牧文四郎が十五歳のときに物語が始まる、文四郎の成長を描いた青春小説です。

 青春小説と言えば、山本有三『路傍の石』、下村湖人『次郎物語』などが定番です。しかし、それらを読んだ生徒の反応は「ありえん」の一言。彼らの土壌であるテレビやインターネットなどのメディアに象徴される現代社会が、他人に情けをかけること、真っ直ぐに生きること、一生懸命に頑張ることなど、いわゆる「美徳」を相対化しているからです。大人が自信を持って絶対的な価値を示せない今、青少年による問題が多発しているのは無理もないことではないでしょうか。
 
 そんな現代社会において、藤沢周平は青春小説のフィールドを江戸時代に置くことによって、「美徳」を伝えることに成功しました。現代から微妙に距離がある江戸時代では、「ありえる」ことなのです。
 
 学問や剣術に打ち込む姿。仲間を想う姿。父親を慕う姿。恋心を抱く姿。文四郎の真っ直ぐで一生懸命な姿は、周りの人たちの心を動かします。それらの情けを受け、文四郎自身も成長していきます。
 
 また、その学問や剣術(課外活動)、仲間、父親(両親)、恋心は、現在の生徒をとりまく事柄でもあります。文四郎の成長を、彼らの成長と重ね合わせると、より実感が湧く物語だと思います。
 
 自然描写もすばらしい。藤沢作品の多くは海坂藩という架空の藩を舞台としています。藤沢周平の故郷の山形県鶴岡がモデルと言われています。それは日本の原風景です。その風景の下、日本の「美徳」は育まれてきました。物語においても、きっと生徒たちの心を洗い、「美徳」を植えつけてくれることでしょう。

 残念ながら春休み中図書館は蔵書点検や新年度の準備のため閉館しています。その代わりに一学期までの長期貸し出しを行っています。おそらく生徒たちはたくさんの本を借りて帰っていることと思います。ご家庭においても、読書のすすめをいただければ幸いです。

 蛇足ですが、昨日よりNHKでドラマ「蝉しぐれ」が再放映されています。あと、本日と22日〜26日の21時15分から放映される予定です。映像と小説の違いを感じるのも、また一興では。

2003年12月20日発行

 先月、図書館は非常な賑いを見せていました。1・2年生の校外学習にかかる校外学習レポート作成、3年生の修学旅行にかかるリサーチレポート作成によるものです。1年生は飛鳥に関する本を、2年生は奈良の古社寺に関する本を、3年生は各々が設けたテーマに沿った本を活用しながら励んでいました。随時いろんな教科からのサポートを受け、質量ともに素晴らしいレポートを完成させてくれました。

 近年、「ハリー・ポッター」、「ダレン・シャン」などファンタジー小説ブームによるものか、生徒たちの読書量が増えているような印象を持っています。それに比例するがごとく、読む力や速さも目を見張るものがあります。しかし、物語性のない論述文や説明文を読むことは苦手なようです。レポート作成の過程でそれを感じました。ファンタジー(空想、バーチャルな世界)の領域に固執するあまり、リアリティーのある現実社会が退屈に思えてしまうのでしょうか。

 今年、2年生にはことあるごとに新書の薦めを行ってきました。論述文や説明文に慣れるため、そして現実社会を知ってもらうためです。そんな矢先の養老孟司『バカの壁』(新潮新書)ブームです。脳科学からのアプローチとして、人間の本来的な性質は個性というものに相反していること、共同体への理解、人間への共感といった触れ合いから個性が生まれることを得ました。それらを踏まえた上で、生徒たちの個性の育成に、読書教育が何かできないかと考えている次第です。

 残念ながら冬休み中図書館は閉館しています。その代わりに3学期までの長期貸し出しを行っています。おそらく生徒たちはたくさんの本を借りて帰っていることと思います。新年が明けて、ファンタジーによる感性だけではなく、現実社会に依拠する知識や教養がついた生徒たちの姿に会えること楽しみにしています。

2003年7月18日発行

 
 「私がひどく怒りを覚えるのは、読書をたっぷりとしてきた人間が、読書など別に絶対にしなければいけないものでもない、などと言うのを聞いたときだ。こうした無責任な物言いには、腸が煮えくり返る。ましてや、本でそのような主張が述べられているのを見ると、なおさら腹が立つ。自分自身が本を書けるまでになったプロセスを全く省みないで、易きに流れそうな者に「読書はしなくてもいいんだ」という変な安心感を与える輩の欺瞞性に怒りを覚える。本は読んでも読まなくてもいいというものではない。読まなければいけないものだ。」(齋藤孝『読書力』(岩波新書)4・5頁)

 夏休みには時間の余裕があります。「易きに流れ」、ダラダラ過ごすのはとてももったいないことです。普段、学業やクラブに追われ、本から遠ざかっていた生徒も、これを機に本と向き合って欲しいと願っています。

 夏休みも何日か図書館を開館しています。クラブのついででも構いませんので、図書館の利用をお勧めいただければと思います。

関西学院中学部図書館 - 2003年度関西学院中学部通信

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